凝集体・粒子解析
バイオ医薬品の凝集体は、数十nmから数百µmまで幅広いサイズが存在します。様々な手法を用い、凝集体の濃度やサイズ分布を分析します。
超遠心分析(AUC)
超遠心分析(Analytical ultracentrifugation; AUC)は、溶液に大きな遠心力をかけ、溶質が時間とともに沈降する様子を観測し、得られた沈降挙動を解析することで溶質の形状や分子量、分散・会合状態などを明らかにする方法です。
AUCはバイオ医薬品の凝集体分析の中でも分解能に優れた手法の一つです。AUCでは、SECなどの汎用手法では分離定量が困難なサイズ域の会合体・凝集体を高い分解能で検出できます。製薬会社をはじめ幅広い分野において活用されていますが、AUCの測定や解析には豊富な経験が必要です。
ユー・メディコでは、これまで蓄積されたノウハウに基づいて、サンプルごとに最も適した分析条件で測定を行い、世界最高水準の解析結果を提供します。
近年は、遺伝子治療の分野でAUCが注目されています。アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターはタンパク質のキャプシド(殻)に遺伝子が内包された複雑な構造をとっており、サンプル中には完全な遺伝子が内包されたAAVベクターと遺伝子が空もしくは一部欠損したAAVベクター、さらにはこれらの凝集物が存在することがあります。弊社では、吸収光学系と干渉光学系の同時測定による、AAVベクター試料における完全粒子、不完全粒子、空粒子の定量の実績がございます。分析用超遠心機のXL-I、XL-Aに加え、多波長同時検出が可能なOptima AUCを新たに導入し、従来機では困難であった特性解析も提供可能となりました。お客様のニーズを的確にとらえ、より高品質なサービスをお客様に提供いたします。
XL-I
XL-A(蛍光検出器搭載)
分析メニュー | 目的 |
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沈降速度法 | 沈降係数分布、試料の純度、凝集体の定量、複合体の化学量論、流体力学的形状、分子量やストークス半径分布、解離会合平衡定数、など |
沈降平衡法 | 分子量、第二ビリアル係数による分子間相互作用の評価、解離会合平衡定数、複合体の化学量論、など |
医薬品の申請に必要なデータを取得するための、信頼性保証体制下での試験も実施しています。
蛍光超遠心分析(FDS-AUC)
超遠心分析(Analytical ultracentrifugation; AUC)は、バイオ医薬品の凝集体定量に最も適した手法の一つとして、多くの製薬会社に利用されています。
バイオ医薬品の上市数が増えるにつれ、体液や細胞培養液などの実際に機能する環境における分散状態について関心が高まりつつあります。しかし、これらの環境は他のタンパク質や核酸、脂質などの夾雑物を含むため、従来のAUCでは目的のバイオ医薬品の分散状態を評価することが困難です。
ユー・メディコは、蛍光検出系(Fluorescence detection system; FDS)を搭載した超遠心分析機器を所有する国内唯一のサービスプロバイダーです。蛍光検出による高い選択性により、従来困難であった夾雑環境における目的タンパク質の分散状態を評価することが可能です。これまでに、血漿、血清、細胞培養液などの夾雑環境における分散状態を評価した実績がございます。
XL-A(蛍光検出器搭載)
関連サービス
蛍光ラベル・精製
目的のタンパク質に蛍光色素によるラベル化をし、HPLC サイズ排除クロマトグラフィーを用いて、蛍光タンパク質を精製します。
密度・粘度測定
振動式密度計を用いて溶媒の密度測定、毛細管落球式粘度計を用いて溶媒の粘度測定をします。 偏比容は、予め測定したタンパク質の濃度変化に伴う密度変化の傾きから算出します。
フローイメージング法
バイオ医薬品の品質管理において、subvisible particles(SVP)と呼ばれる2μm以上のサイズの凝集体分析には、一般的に光遮蔽(LO)法が用いられてきました。しかし、LO法では実際の存在量よりも粒子カウントが少なくなる傾向がみられるため、注意が必要とされています。近年、LO法に代わって多くの製薬会社で実施されるようになってきたのが、フローイメージング法です。
フローイメージング法とは、薄いガラスで挟まれたセルにタンパク質溶液を一定速度で流し、高速カメラで溶液中の様子を連続的に撮像し、画像解析プログラムを用いて各粒子のサイズと数、さらには形状や透明度などの分布を求める方法です。
ユー・メディコでは、FlowCam 8100を用い、バイオ医薬品の品質試験、特性解析、安定性試験(長期保管、加速、苛酷試験)における凝集体解析を実施しています。
FlowCam 8100
Mass Photometry法
Mass Photometry(MP)法は、ガラス基板表面上の試料(1分子)の散乱光強度から、溶液中の生体分子(核酸、タンパク質、AAVベクター、凝集体等)やナノ粒子の分子量を測定する方法です。
MP法の原理(サンプル:AAVベクター)
MP法では少量のサンプルを用いた定量が可能です。
サンプル | 必要量 |
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抗体 | 数nM、~10 µL |
AAVベクター | ~1012 vg/mL、10 µL |
MP法を用い、抗体の会合状態の評価や、抗体と受容体の相互作用解析(解離定数KDの決定)を行います。
また、AAVベクターの、空粒子(Empty capsid:EC)、完全粒子(Full particle:FP)の相対比率を短時間で求めることができます。
MP法を用いたAAV8の測定例
Refeyn OneMP
少量のサンプルを用い、短時間で結果が得られる方法ではありますが、再現性を得ることや結果の解釈は簡単ではありません。弊社では、これまでの経験に基づき、高品質な分析結果をご提供いたします。